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サラリーマンが政治参加できる制度の確立を
日本は世界的にみても顕著な世襲議員国家であるといわれている。世襲議員とは親の地盤を引き継いで議員となった政治家のことである。米英などの議員の世襲比率が3〜5%なのに対し、日本は3割が世襲議員である。特に自民党は比率が高く、今回の内閣では安倍総理を筆頭に、閣僚は殆どが二世、三世の世襲議員ばかりである(19名中11名)。
世襲議員が多くなると、政治は停滞すると言われている。政治能力ではなく、親の選挙地盤で議員となっているのだから、国の将来よりも自分の票田を保持することが大事ということになり、政治改革には無関心になる。この状況を打破するためには、新規の議員を増やすこと、一般国民からもっと政治家に立候補するようにしなくてはならない。一般国民とは、つまりサラリーマンである。しかし日本の選挙制度はサラリーマンに厳しい内容になっている。このためサラリーマンが政治に参加できず、世襲議員がその利権を独占する一因となっている。
●サラリーマンが立候補できない選挙構造
サラリーマンが選挙に立候補するにあたって、障害となるのが「時間」と「お金」である。
今の選挙制度では、選挙期間ともなると一日中選挙活動を行わなければならない。当選可能ラインまで人脈をつくりあげていくのが選挙であるとすれば、仕事に明け暮れるサラリーマンが選挙を行うには、ある程度の休暇が保障されなければならない。だが、その期間の休暇を認めてくれる会社は殆どいない。議員活動中の期間にしてもそうである。数年間という長い期間の休職を認めてくれる会社がどれだけあるだろうか。一部の企業では議員在職中の休職を認めてくれる会社もあるが、ごく少数である。つまり一般的なサラリーマンにとって、選挙に立候補することは仕事を辞めることと同義である。
これでは当選して議員になったとしても、任期終了と同時に無職となる。落選の場合はその瞬間にプータローだ。家族を路頭に迷わせるかもしれない状況で立候補を決意できる人はそう多くないだろう。
●サラリーマンを政界進出させる制度作りを
前述の文章を見て、「仕事を辞めるぐらいの覚悟が無いのに選挙に出るな」という意見もあるかもしれない。確かに勝算も無いのに選挙に出るのは無駄だろう。しかし、サラリーマン以外の職業、例えば農家や自営業は、選挙に落選しても仕事を続けられる。親が議員の二世議員も同様だ。サラリーマン"だけ"が、仕事をリスクにかけないと選挙に臨めないのだ。これは不公平ではないだろうか。
この問題を解決するには、サラリーマンの「選挙活動の保障」と「生活の保障」を法律で認める必要がある。
具体的には以下の3つである。
選挙運動期間中の休職制度
議員活動中の休職制度(もしくは兼業制度)
選挙後の職場復帰の保障
選挙運動期間の休暇が保障されれば他の候補者と同じ舞台で戦うことができ、落選しても生活が保障されるので、生活を心配することなく立候補が可能になり、実質的な「被選挙権」の拡大につながる。
また、当選しても議員の職に執着する必要がないので、任期中に議員として目的を果たせば引退し、安心して元の会社や役所に復職できる。その結果、議会の風通し、世代交代も促進されるだろう。
●サラリーマンを政治参加させる理由〜世襲議員では改革はできない
序段でも述べたが、現在の選挙構造の中で生活する既得権益者(=現職国会議員。特に世襲議員)では、自分の票田を失うような抜本的な改革はできない。東日本大震災で国民には増税を課しながら自分たち国会議員の歳出削減は2年で終了させたこと、国民に対し約束したはずの議員定数削減が立ち消えたこと、民主党政権時に出された「立候補休暇制度」の法案が、審議もされずに廃案となったこと(※)などはその典型である。
この日本を復活させるには、既得権益に組しない政治家が必要であり、そのためには、国民が政治参加しやすい選挙制度が必要不可欠なのである
※民主党政権時代に第151回通常国会(召集日平成13年1月31日・終了日同年6月29日)および第154回通常国会(召集日平成14年1月21日・終了日同年7月31日)「立候補休暇に関する法律案」が提出された。この法案は「告示の2週間前から選挙日2日後までの休暇を認める」「立候補を理由に解雇してはならない」という素晴らしいものだったが、審議もろくにされないまま廃案となっている。現職議員の既得権益を脅かしかねない新勢力を生み出すような法案など、とても賛同できなかったのであろう。
●海外の選挙活動および議員としての活動に関する制度
最後に、海外の選挙制度の例を挙げる。立候補休暇制度は決して特殊な例では無いことが分かるだろう。
フランス |
選挙運動の為の10日間の休暇が取得できる。
議員活動中は休職扱い。
引退後は同じ役職で職場復帰できる。 |
ドイツ |
選挙運動の為に最大二か月の休暇が請求できる。
立候補や議員活動を理由とした解雇は認められない。
引退後の職場復帰では、議員活動期間も勤務期間に含めた昇給を行う。 |
イタリア |
議員在職中は休暇扱い。
引退後に復職した場合、議員活動期間中も含めた定期昇給がある |
アメリカ |
議員引退後に現場復帰可能。 |
〈参考〉
「立候補休暇に関する法案(廃案)」
第151回参議院本会議資料
第154回参議院本会議資料
「政治家に必要な能力とその育成を巡っての論点整理」経済同友会
「フランスの選挙」山下茂
「世襲議員のからくり」上杉隆
wikipedia
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